飲食店の運営において衛生管理は極めて重要な役割を果たします。食品衛生法をはじめとする法律を遵守することは、店舗を安全に営業するうえでの基本です。例えば、食品衛生法では食中毒の防止や食品の安全性確保が義務づけられており、違反すれば営業停止や罰金といった厳しい処分を受ける可能性があります。
この記事では、衛生管理の基本的な知識から具体的な実践方法まで、飲食店の衛生管理に欠かせないポイントを詳しく解説します。衛生管理を行う際の参考にしてください。
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飲食店衛生管理の基礎知識
HACCPによる衛生管理

HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)とは、食品の安全を確保するための国際的な衛生管理手法であり、食品の製造・調理工程において発生する可能性のある危害要因(細菌汚染、異物混入、化学物質の残留など)を事前に分析し、リスクを最小限に抑えるための管理を行う仕組みです。 各工程の重要管理ポイント(CCP)を定め、継続的に監視・記録することで、食品事故を未然に防ぎ、安全性を高めることを目的としています。HACCPは、国際的に認められた衛生管理基準であり、アメリカやEUをはじめ多くの国々で導入されています。日本では、2021年6月より食品衛生法の改正により、飲食店を含むすべての食品関連事業者に対しHACCPに基づく衛生管理の導入が義務付けられ、小規模事業者向けには簡略化された基準も設けられています。
小規模店舗でも実践できる取り組みとして、調理器具や冷蔵庫の温度を記録し、衛生チェックリストを活用して管理を行う方法が効果的です。導入の際には、スタッフ全員がHACCPの目的や手順を理解し、日々の業務の中で自然に取り組める体制を整えることが重要です。
HACCPについては以下の記事でも詳しく解説しております。
また、HACCPと5S(後述)は、食品の衛生管理において密接に関係しています。5Sを徹底することで作業環境が清潔に保たれ、異物混入や汚染のリスクを減らし、HACCPの管理がより効果的に機能します。
衛生管理の基本「5S」
飲食店における衛生管理の基本として、「5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)」が重要視されています。これらの5つの要素は、店舗全体の衛生状態を向上させるだけでなく、作業効率や従業員の意識改革にも大きく寄与します。それぞれの要素を深掘りし、具体的な実践方法を見ていきましょう。
1. 整理

「整理」とは、必要なものと不要なものを分け、不要なものを徹底的に排除することを指します。飲食店では、古くなった調味料、使われていない調理器具、賞味期限切れの食品などが衛生リスクとなる可能性があります。これを防ぐため、定期的に在庫や備品をチェックし、必要最低限のものだけを残すことが重要です。
〈実践例〉
・食材や調味料を定期的に点検し、期限切れや劣化したものを廃棄。
・使わなくなった器具や道具を処分して、作業スペースを確保。
・必要なアイテムリストを作成し、過剰な在庫を持たない。
2. 整頓

「整頓」とは、必要なものを使いやすい場所に配置し、すぐに取り出せる状態を作ることです。調理場では、工具や食材が雑然としていると作業効率が低下し、汚れが溜まりやすくなるため、整頓が欠かせません。また、洗剤を用途別に整頓しておくことで誤使用を防ぐ役割もあります。
〈実践例〉
・調理器具を使用頻度や用途別に分類し、専用の収納場所に保管。
・ラベルを活用して保存容器や調味料の中身を明示。
・片付けのルールを明確化し、スタッフ全員が共通の基準で整頓を実施。
3. 清掃

「清掃」は、調理場や調理器具をきれいな状態に保つことを指します。日常的な掃除のほか、定期的な大掃除も含まれます。特に飲食店では、汚れた厨房や設備が食中毒発生リスクにつながるため、細部まで徹底的に清掃する必要があります。
〈実践例〉
・毎日の営業終了後に、調理台やシンク、床を清掃。
・換気扇や排水溝などの見えにくい場所も定期的に掃除。
・清掃用具は用途ごとに分けて管理し、使用後は必ず洗浄・乾燥。
4. 清潔

「清潔」とは、清掃を徹底し、衛生的な環境を保つことを意味します。一時的に清掃を行うだけでなく、その状態を長期間維持するための仕組みを整えることが重要です。
〈実践例〉
・衛生チェックリストを作成し、スタッフが毎日確認できる体制を構築。
・食材や器具が清潔な状態で保管されているかを定期的に確認。
・清潔なユニフォームやヘアネットを必ず着用し、作業開始前に手洗いを徹底。
5. しつけ
「しつけ」は、スタッフ全員が衛生管理のルールを守り、日々の行動として定着させることを指します。飲食店では、全スタッフが一貫して衛生基準を遵守することが店舗の信頼性を向上させる鍵となります。
〈実践例〉
・衛生教育プログラムを定期的に実施し、5Sの重要性を全員に浸透させる。
・ルール違反が発生した場合は適切に指導し、改善を促す。
・チェックリストや報告制度を活用し、スタッフ間で衛生意識を共有。
5Sを実践することで、店舗内の衛生状態が向上し、食品の安全性を高めるだけでなく、作業効率やスタッフの意識も大幅に改善されます。これにより、お客様に安心感を提供でき、店舗の信頼性やリピート率の向上にもつながります。飲食店にとって5Sの徹底は、成功する店舗運営の基盤といえるでしょう。
衛生管理の徹底にはルーティン化がカギ
衛生管理を徹底するためには、確認項目を明確にし、毎日のルーティンとして定期的なチェックを行うことが重要です。チェックリストを作成し、開店前、営業中、閉店後にそれぞれの衛生管理項目を明確にしておきましょう。
開店前の衛生管理
開店前には、厨房や調理器具の点検を行い、設備が問題なく使用できる状態かを確認します。また、テーブルや椅子などを消毒し、お客様が安心して過ごせる環境を整えます。冷蔵庫や冷凍庫の温度も確認し、食材が適切に保存されていることを確かめることも欠かせません。
営業中の衛生管理
調理器具や食器の管理が不十分だと、食中毒の原因となる菌が繁殖し、お客様の健康に悪影響を与える可能性があります。調理器具を使用する前の加熱消毒や、使用後の食器の洗浄、清潔な戸棚への保管など、使用前後を含めた衛生管理を徹底することが重要です。スタッフが手洗いの徹底をしているかもチェックし、食品の保管状況や調理工程での清潔さを確保するために、食材の取り扱いにも注意を払いましょう。
閉店後の衛生管理
閉店後は、店舗全体の清潔さを保つために徹底的な清掃作業を行う時間です。特に、床や排水溝、換気フードなど、日中の営業で汚れが蓄積しやすい箇所を重点的に清掃しましょう。これらを適切に管理することで、衛生面だけでなく設備の耐久性も向上します。
また、調理器具やシンクの消毒も必須の作業です。一日の汚れを確実に取り除き、菌の繁殖を防ぐことで、翌日の営業を安全にスタートできる準備を整えます。清掃後は、使用した清掃用具の洗浄・乾燥を行い、次回の使用に備えることも忘れないようにしましょう。
食中毒を徹底予防!衛生管理、その他のポイント
食中毒の約48%が飲食店で発生しているというデータ(※)があり、食中毒予防のための取り組みは飲食店において必要不可欠です。
食中毒を防ぐには、食材の仕入れから保存、調理、提供、そして残った食品の処理に至るまで、各工程での衛生管理が欠かせません。上述した以外で飲食店向けの具体的な取り組みを紹介します。
※出典:厚生労働省「令和5年食中毒発生状況(概要版)」
食材の仕入れ
食材を仕入れる際は、信頼できる業者を選び、鮮度や品質をしっかりと確認します。消費期限が明確に表示された食材を選び、冷蔵や冷凍が必要なものは適切な温度で管理された状態で受け取りましょう。生鮮食品や冷凍食品は、仕入れ後すぐに適切な保存場所へ移動させることが重要です。
仕入れに関しては以下の記事でも詳しく解説しています。
食材の保存

仕入れた食材は、冷蔵庫や冷凍庫の適切な温度で保存し、冷気の循環を妨げないように収納します。生肉や魚は他の食品に触れないよう、密閉容器や専用の保存袋を使用しましょう。保存時にはラベルを貼り、仕入れ日や使用期限を明記して管理することも重要です。
クロスコンタミネーション

クロスコンタミネーション(交差汚染)とは、生肉や魚などに付着している食中毒の原因菌やウイルスが、まな板や包丁、手指などを介して他の食材に移ることを指しています。これを防ぐためには、調理器具を用途別に使い分ける、使用後はすぐに洗浄・消毒する、手洗いを徹底するなどの対策が必要です。例えば、生肉や魚介類を切った後の器具を、加熱せずに提供する生野菜や果物に使用しないよう徹底します。
調理
調理時には、食品の中心部を75℃以上で1分以上(二枚貝等ノロウイルス汚染のおそれのある食品の場合は85℃で1分間以上)加熱することを基準※に十分に火を通します。特に鶏肉やひき肉、魚介類は加熱不足が原因で食中毒を引き起こすケースが多々あるため、温度計を活用して中心温度を確認することが推奨されます。また、調理器具や調理台は使用後すぐに洗浄・消毒を行い、衛生的な状態を保つことが重要です。
※参考:厚生労働省「食事の提供における食中毒予防のための衛生管理」
残った食品の処理
営業終了後に残った食品は、適切に廃棄または保存します。保存する場合は清潔な容器に移し、再加熱が必要な場合には十分に加熱してから提供します。保存期間が長くなりすぎた食品や品質に不安があるものは、廃棄を徹底して安全を最優先に考えましょう。
スタッフ教育
スタッフ全員がその重要性を理解し、適切に行動できるよう教育を行うことが不可欠です。衛生管理は一人ひとりの意識と行動によって成り立つため、定期的に衛生管理の徹底を呼びかけ、店舗全体で衛生意識を共有することが重要です。

特に基本となるのは、手洗いやユニフォーム管理など身だしなみのチェックです。例えば、手洗いは流水と石鹸を使って最低20秒間かけて行うなど具体的な指導を行い、その手順を実際に実践させることが効果的です。また、調理中のユニフォームは常に清潔な状態を保ち、髪の毛の混入を防ぐためにヘアネットやキャップの使用を義務づけるなどの具体的なルールを設定しましょう。
さらに、スタッフのモチベーションを維持することも重要な課題です。単にルールを守らせるだけでなく、衛生管理の実践が店舗運営にどのように貢献しているかを具体的に説明することで、スタッフに自分たちの役割の重要性を実感してもらえます。例えば、「清潔な店舗がリピート率やお客様の信頼にどれほど影響を与えるか」など、スタッフがイメージしやすい例を用いて共有すると効果的です。
また、提供した食品が原因で、お客様が食中毒を発症する可能性があるため、従業員自身の体調管理も重要です。食中毒の代表的な原因であるノロウイルスなどの感染性胃腸炎は、(感染している)従業員を介して食品にウイルスが付着し、感染を広げる恐れがあります。特に、下痢や嘔吐などの症状がある場合は、ノロウイルス感染の可能性が高いため、出勤を控えることが求められます。従来の健康確認に加え、検温や倦怠感の有無をチェックすることで、感染拡大を未然に防ぐようにしましょう。
トラブル時の対応策
食中毒や異物混入といったトラブルが発生した場合は、速やかに事態を収拾する行動を取ることが重要です。まず、被害を受けたお客様に真摯に対応を行い、原因を調査します。次に、保健所に連絡し指示を仰ぎます。その後、再発防止策を徹底し、スタッフに対しても適切な説明・指導を行います。
1. 食中毒が発生した場合の対応
食中毒が疑われる場合、まずはお客様からの症状や食事内容を正確にヒアリングし、記録します。お客様には、速やかに医療機関を受診するよう案内し、必要に応じて治療費の負担などのサポートを検討します。
次に、店舗内での原因調査を開始します。食中毒の原因と思われる料理が残っている場合は、速やかに保健所に連絡し、指示を仰ぎます。保健所の調査協力や指導を受けて、問題の原因を特定し、拡大を防ぐことが重要です。また、店舗内の衛生管理体制を見直し、再発防止策を徹底しましょう。
さらに、スタッフへの衛生教育を改めて実施し、手洗いや調理器具の消毒、適切な加熱調理などの基本的な衛生対策を再確認します。問題解決後は、もう一度お客様に対し誠実な謝罪と改善内容を伝えることで、信頼回復に努めましょう。
2. 異物混入が発生した場合の対応
異物混入のトラブルが発生した場合は、まず混入した異物の種類や状況を確認します。お客様に謝罪し、異物を速やかに回収した上で、どの工程で混入が発生したのかを徹底的に調査します。
異物の原因が調理器具や包装資材の不具合である場合は、すぐに修理や交換を行い、再発を防止します。さらに、スタッフの作業手順や服装の管理が適切であったかも確認し、不備があれば改善を徹底します。
再発防止策として、異物が混入しない環境を整備するためのチェックリストを作成し、調理場や仕込み工程での確認を日常化します。また、問題の改善内容をお客様に丁寧に説明し、誠意をもって対応することが信頼回復の鍵となります。
まとめ
飲食店における衛生管理は、安全な店舗運営を実現し、顧客からの信頼を築くための基盤です。食品衛生法の遵守やHACCPの導入といった法令対応だけでなく、整理・整頓・清掃・清潔・しつけという「5S」を実践することで、店舗全体の衛生状態や作業効率を高めることができます。さらに、スタッフ教育や設備の整備を徹底することで、食中毒や異物混入といったトラブルを未然に防ぐことができます。
特に、衛生管理は店舗全体で行うという意識と行動が重要です。日々の衛生チェックを習慣化し、トラブル時には迅速かつ誠実な対応を行うことで、店舗の信頼性を維持し、顧客満足度を向上させることができます。これらの取り組みを継続することで、安心・安全で信頼される店舗運営を実現しましょう。
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