いま、国産牛肉の世界で和牛に次ぐ勢いを誇る「交雑牛」をご存じでしょうか。
交雑牛とは、異なる品種の牛を交配して生まれた牛のこと。手頃で安定した価格と品質で支持を広げ、食材の高騰に苦しむ飲食業界の救世主として、近年特に脚光を浴びています。
肉用の交雑牛のほとんどは、黒毛和種と乳用種(主にホルスタイン)のハーフ。ハーフゆえに和牛とは異なる魅力をもつ交雑牛が、飲食店にどんなメリットをもたらすか、その生産背景とともに解説させていただきます!
畜産農家を支える交雑牛

生まれた交雑牛を酪農家が一貫肥育して出荷まで行うパターンも多く、酪農業の新たなスタイルとなっている。
まず、黒毛和種と乳用種の交配は、酪農家にとって大きなメリットがあります。
繁殖技術が進歩しても、乳用牛がミルクを出すために仔牛を生む必要があるのは変わりありません。
特にホルスタインの仔牛は赤ちゃんといえども身体つきが大きく、その初産は母牛にとっても命の危険が伴います。対して和牛の仔牛は、ホルスタインと比べるとひと回り小さな身体つき。
そこで母牛の身体を守るため、オスの和牛と交配し、体の小さい交雑牛を生ませる酪農家が増えています。
出産を無事終えた母牛はミルクを出すようになり、生まれた交雑牛の仔牛は肉用種として肥育農家に売ることができるため、酪農家にとって交雑牛は一石二鳥の存在。
さらに、肥育農家の立場からすると、交雑牛は和牛より成長が速く病気にも強いこともあり、高収益で育てやすいという特徴もあります。まさに、良いことづくしと言えます。
そのため交雑牛の肥育は、日本の畜産農家の経営を安定させる重要な役割を担っているといっても過言ではありません。近年、日本各地に交雑牛ブランドが数多く生まれているのには、こうした背景があるのです。
黒毛和牛と乳用種のハイブリッド

脂が多くこってりしすぎた肉が苦手という客層にも受け入れられるのが、交雑牛の魅力
では飲食店が交雑牛を提供する場合、そこにどんなメリットがあるのでしょう?
交雑牛は、黒毛和牛の脂と柔らかさを備えた肉質、そして乳用牛のしっかりとした赤身を両方備えています。香りの芳醇さや霜降りの強さは純血の和牛に及びませんが、程良い脂肪と赤身のバランスの取れた、あっさりとした旨味を堪能することができます。
このコスパの良いバランスに優れた味わいを活かして、幅広いメニューに使用できることは、飲食店側にとって大きなメリットです。
さらに交雑牛には、より付加価値を高めたブランド牛も多く見られます。
各地域ならではの環境を活用したり、特産品を飼料に配合したり、工夫を凝らした肥育法でブランドを打ち出しています。交雑牛のなかでもブランド化された肉を使用することで、飲食店は使い勝手の良さに加え、メニューにさらなる付加価値を加えることができるのです。
さくらビーフ、発売しました!
食肉用にと畜される乳用種と黒毛和種の間を埋める存在として、生産者と飲食店の両方に大きなメリットをもたらす交雑牛。近年では一部の交雑牛にA5ランクに評価される品質のものが登場するなど、そのクオリティは日々高まっています。
そんな中、プレコフーズでも今回新たな交雑牛ブランド「さくらビーフ」の内ももを発売します。
さくらビーフが育つのは、北海道の根釧地区を中心とした日本各地の指定牧場。
牧場は美味しい牛肉に視点を置いた、独自のチェックリストで定期的に採点しています。厳しい基準をクリアした牧場が、さくらビーフのクオリティを支えています。和牛とほぼ同じ飼料と環境が生み出す、柔らかな肉質と上質な味わい。これこそが、さくらビーフの特徴です。
今回発売する内ももは、ローストビーフなどの塊肉調理にも使いやすいブロックカット規格。黒毛和牛とは異なる魅力の味わいを、リーズナブルに提供できます。
まずはさくらビーフをお試しいただき、ぜひ交雑牛の世界を深堀りしてみてください!
【参考文献】農林水産省 畜産局畜産振興課(2024) . 「肉用牛をめぐる情勢」.農林水産省HP. https://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/lin/l_katiku/attach/pdf/r6_nikuyougyuu-2.pdf, (閲覧-2025年10月) .
※画像はイメージです。


