食肉の華、和牛。旨味こぼれる赤身、とろける霜降りの脂に芳醇な香り……。たまらないですよね。日本らしい食材でありながら、ワールドワイド。定番でありながら高級。多くの人に愛され、魅力を語られる食材です。そんな和牛の今さら聞けない基礎知識、ちょっと復習してみませんか?
和牛って何だ!

和牛の飼育には時間が必要で、出荷まで月齢で25~30ヶ月、長いと40ヶ月以上かかり、他の肉用牛と比べてコストもかかる
そもそも、和牛とは何なのでしょう。「和」と「牛」、この2文字が並ぶと、いかにも日本産の牛といった雰囲気です。しかしながら和牛とはあくまでも品種の名前。特定の産地を指す言葉ではありません。
日本産の牛(全飼育期間の中で最も長い時間を日本で過ごした牛)には国産牛という呼び名があります。和牛は国産牛のひとつで、その生産量は国産牛全体の約5割弱にのぼります。(※1)
農林水産省が2007年に発表したガイドライン(※2)によると、「和牛」と表示できる牛肉は、黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種と、これら4品種の間での交雑により生まれた牛、かつ、国内で出生・飼養された牛のことを指します。
【黒毛和種】
中国地方で飼育されていた黒牛と欧州種が交雑して誕生。日本で飼育される和牛の90%以上を占める(※3)。松阪牛、神戸牛、近江牛、黒火乃牛などはすべて黒毛和種。霜降りが入りやすく、水分量が多く柔らかい肉質。
【褐毛和種】
熊本・高知産の在来牛に外国種を交配して改良を進めた品種で、毛色は黄褐色から赤褐色。赤身が多い肉質だが適度に脂肪が含まれる。
【日本短角種】
かつて東北北部で飼われていた南部牛に米国産のショートホーンなどを交配。毛色は濃褐色。北海道・東北の厳しい寒さにも耐えることができ、脂肪の少ない赤身肉が特徴。
【無角和種】
山口県産の在来牛にアンガス種をかけ合わせて誕生。毛色は黒色。山口県が主産地。水分量が多く柔らかい肉質。産肉能力に優れるも、現在は頭数減少している希少種。
面白いのは、この4種にそれぞれ外国種の血統が入っていること。外国種の影響を受けていない純血の和種としては、見島牛、口之島牛という種類がいます。この2種は非常に頭数が少なく、見島牛に至っては天然記念物に指定されるほどです。
※1 農畜産業振興機構. “年報『畜産』国内編 2024年度”. 2025-3-26. https://www.alic.go.jp/content/001264440.pdf (参照2025-6-6)
※2 農林水産省.“和牛等特色ある食肉の表示に関するガイドライン”. 2007-3-20. https://www.maff.go.jp/j/study/katiku_iden/06/pdf/ref_data2.pdf(参照2025-6-6)
※3 農林水産省. “和牛の現状について” . https://www.maff.go.jp/j/study/idenhogo/dai1/pdf/ref_data2.pdf(参照2025-6-6)
伝説の和牛
冒頭で述べたような一般的な和牛の味わいのイメージ。これは、和牛の中でもいちばん生産量が多い黒毛和種から来ています。では黒毛和種がここまで全国的に広まった理由は何でしょう? その理由のひとつに一頭の伝説的な牛の存在がありました。
その牛の名前は「田尻号」。1939年に兵庫県に生まれた田尻号は、黒毛和種の種牡牛として、自然交配のみで1500頭近い子供をその生涯で残したそうです。1500頭! もし牛が15人制ラグビーを始めたらチームが100チームもできるレベルです。
その子どもや孫は宮崎県、飛騨市、松阪市、米沢市など国内各地の和牛の産地へ引き取られて肉質の改善に貢献していきます。出身地である兵庫県香美町の調査によれば、日本全国の黒毛和種の99.9%が何らかの形で田尻号の血統を受け継いでいるそうです。田尻号の遺伝子が、日本の黒毛和種を形作っているといっても過言ではないのです。(※4)
※4 兵庫県香美町.“和牛のふるさと 99.9%の真実” 香美町観光ナビ.https://www.kami-tourism.com/feature/wagyu-no-genten
海を越えた和牛

↑オーストラリアでは100%和牛の血を引いているWAGYUを“フルブラッド”と呼ぶ
田尻号の遺した黒毛和種の味わいは、海をも超えて人々を魅了しています。現在では外国産の“WAGYU”が生産され海外でも流通するようになりました。
これは1970年代から90年代にかけて、和牛の遺伝資源がアメリカ、オーストラリアなどに持ち込まれたためです。外国生まれである時点で日本国内では和牛と称する条件は満たしていません。例えばオーストラリアでは和牛以外の品種との交雑した牛に対してもWAGYUの呼称を認めているなどの違いもあります。
言葉としてのWAGYUはインバウンド客向けに非常に刺さる宣伝ワードとなっており紛らわしいのですが、正確には品種としてのWAGYUは和牛と異なる発展を遂げた別の個性をもつ、親戚のような存在です。
黒火乃牛、新商品&新規格充実中!
和牛の濃厚な世界を解説してきましたが、最後はプレコフーズのオリジナルブランド和牛「黒火乃牛」を紹介させていただきます! 黒火乃牛は、熊本発の黒毛和種。しつこさを感じない、舌の上でとろける食感を生み出す上質な脂、コク深い赤身の旨味、口に広がる豊かな風味。この黒火乃牛の生産牧場では、母乳での育成から安全衛生への配慮を徹底した出荷体制まで、一貫した生産管理にこだわり抜いています。
今回、切落しをはじめとする新商品2種、グルムキ加工やサイズ変更により使いやすくなった新規格を4種追加いたしました。焼肉、居酒屋、バル、専門店など、さまざまな業態でご満足いただけるように取りそろえた15部位21商品。ぜひお試しください!