飲食店の開業を考えている方なら、必ず必要になるのが営業許可の取得です。確認事項が多く、初めての方にとっては不安も多いかもしれません。しかし、適切な準備と正しい知識があれば、決して難しいものではありません。
この記事では、保健所への事前相談から実際の申請手続き、そして開業後の注意点まで、営業許可に関する一連の流れを、実践的なアドバイスを交えながら詳しく解説します。これから開業を目指す方や、営業許可に関して再確認をなさりたい方は参考にしていただけましたら幸いです。
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飲食店開業に必要な営業許可証とは
飲食店を営業するためには、法律で定められた衛生基準を満たしていることを証明する必要があります。この証明書が、飲食店営業許可証です。保健所などの行政機関が、店舗の設備や衛生管理状況などを審査し、基準を満たしていると判断した場合に発行されます。
営業許可証がないと開業できない理由
食品衛生法では、飲食店営業を行うためには都道府県知事の許可を受けることが義務付けられています。無許可での営業は法律違反です。発見された場合、食品衛生法第52条第1項(無許可営業)違反として、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科される可能性があります。また、行政処分として営業停止や許可の取り消しなどの措置を受ける場合もあります。
食品衛生を保つため

これは、食品衛生法が公衆衛生の向上と食品の安全性確保を目的としているためです。食品を扱う飲食店では、適切な衛生管理が求められ、食中毒や食品汚染のリスクを防ぐために一定の基準を満たす必要があります。営業許可制度は、施設の衛生状態や食品の保管方法、従業員の衛生管理状況を事前に確認することで、消費者に安全な飲食物を提供する環境を整える役割を果たしています。さらに、基準を統一することで、全ての飲食店が公平な条件で運営できる仕組みを構築し、食品業界全体の信頼性向上にも寄与しています。
火災リスクを防ぐため
また、飲食店では調理中の火災リスクがあり、消防法に基づく防火対策が求められます。営業許可を取得する際、厨房設備や排気ダクト、避難経路などの設置状況が消防署によって審査されますが、火災発生時に従業員や顧客の安全を確保できる施設であることが確認されているのです。
また、一定規模以上の飲食店には防火管理者の選任が義務付けられ、適切な体制を整える必要があります(後述)。営業許可は、法律遵守だけでなく防火対策を徹底し、安心して利用できる飲食店を運営するために不可欠です。
営業形態によって異なる許可の種類
飲食店の営業許可は、提供する料理や営業形態によって必要な種類が異なります。2021年6月の食品衛生法改正により、これまでの34業種が32業種に整理され、実態に即した許可制度へと変更されました。
物件飲食店営業許可
一般的な飲食店として料理を提供する場合には、「飲食店営業許可」が必要です。店内での飲食提供に加えて、午前0時までのアルコール提供も可能です。また、以前までは簡単な軽食などの提供は「喫茶店営業許可」という別の許可を申請する必要がありましたが、2021年の食品衛生法改正により飲食店営業許可に統合されました。
物件飲食店営業許可(テイクアウト・デリバリー対応)
テイクアウトやデリバリーを主体とする場合も、「飲食店営業許可」が求められます。ただし、店内飲食を行わない場合には、客席や洗面所などの設備基準が緩和されることがあります。具体的な基準は各都道府県の条例によって異なるため、開業予定地の保健所に相談することが重要です。
物件深夜酒類提供飲食店営業開始届
深夜0時以降にアルコールを提供する場合には、飲食店営業許可に加えて「深夜酒類提供飲食店営業開始届」を提出する必要があります。この届出は管轄の警察署で行います。ただし、ファミリーレストランなど主食を中心としたメニュー構成の店舗では、届出なしで深夜のアルコール提供が認められる場合もあります。
施設の構造設備に関する基準や手続きは地域によって異なる場合があります。許可を取得する際には、開業予定地の保健所や警察署に事前に確認することをおすすめします。
営業許可証取得までの具体的な手順と日数
許可証を得るためには、いくつかのステップを踏む必要があります。事前相談から申請、実地検査、許可証交付まで、各段階で注意すべきポイントを押さえて、スムーズに開業準備を進めましょう。

費用は地域によって多少異なりますが、新規取得の場合、おおよそ16,000〜19,000円、継続・更新の場合約12,000円です。
なお、申請から許可証の交付までは通常2〜3週間ほどかかります。ただし、書類の不備や検査で修正が必要な場合はさらに時間を要することもあります。スケジュールには余裕を持ち、早めに準備を進めることをおすすめします。
Step1.保健所への事前相談
開業予定地を管轄する保健所に店舗の図面を持参し、設備や構造が基準を満たしているか確認します。この事前相談で問題点を把握することで、工事後に手戻りが発生するリスクを軽減できます。
窓口に行けば無料で相談できるため、事前に相談しておくようにしましょう。
Step2.営業許可申請の提出 (書類作成から提出まで約2日)
必要書類を揃えて保健所に営業許可申請を提出します。
申請は施設工事完了予定の10日前を目安に提出しましょう。
申請に必要な書類は以下です。
- 営業許可申請書
- 施設の構造及び設備を示す図面(2通)
- 食品衛生責任者の資格を証明するもの
- 水質検査成績書(水道水、専用水道、簡易専用水道以外の水を使用する場合)
法人の場合は営業許可申請に法人番号を記載しない場合、登記事項証明書が必要です。
Step3.施設検査 (申請書提出から検査まで約7日)

申請後、保健所の職員が店舗を訪れて実地検査を行います。この検査では、手洗い設備や食材の保管方法、調理場の床や壁の材質、換気・照明設備、防虫・防鼠対策などが詳しくチェックされます。特に食品衛生に関わる設備については厳しく基準が確認されるため、事前準備をしっかり整えましょう。
Step4.営業許可書の交付 (施設検査から交付まで約5日)
検査に合格すると、営業許可証が交付されます。
交付方法は各自治体によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。
保健所への事前相談のポイント

保健所への事前相談は、スムーズに営業許可を取得するための重要なステップです。特に、調理場の設備や配置が保健所の基準に適合しているかを事前に確認することが大切です。この段階で問題点を解消しておくことで、申請後の修正作業を減らすことができます。
〈持ち物〉
事前相談時に必要な持ち物は以下の通りです。
- 身分証明書 運転免許証やパスポートなど、本人確認ができるもの
- 賃貸契約書 飲食店予定地の賃貸契約書のコピー
- 物件の図面 店舗のレイアウトや設備配置が分かる図面(手書きでも可)
- メニュー案 提供予定のメニューをリスト化したもの
- 資金計画書 飲食店開業にかかる費用や資金調達の計画を示す書類
〈設備基準の確認ポイント〉
保健所の基準では、以下のような設備の設置や仕様が特に重要視されます。
- シンクの数と配置:調理用と下処理用で別々のシンクが必要な場合があります。
- 冷蔵・冷凍設備:保管温度に応じた容量や仕様の設備が求められることがあります。
- 換気設備:調理場の煙や臭気を適切に排出する能力が必要です。
- 手洗い設備:自動水栓が推奨されるなど、衛生面で細かい要件が定められています。
さらに、従業員の更衣室やトイレの設置基準についても確認する必要があります。これらは保健所ごとに微妙に異なる場合があるため、早めに具体的な基準を確認することが重要です。
事前相談では、営業許可申請に必要な書類や手続きの流れについても詳しく確認しておきましょう。保健所によって要求される書類や基準が異なる場合があるため、早期に情報を収集することで、スムーズな申請と開業準備が可能になります。
申請に必要な具体的な準備物
営業許可申請には、複数の書類が必要です。主な必要書類は以下の通りです。
必要書類 | 内容 |
---|---|
営業許可申請書 | 店舗の基本情報、営業形態、提供する食品の種類などを記載する重要な書類。記入漏れや誤記がないよう注意。 |
施設の構造及び設備を示す図面(2通) | 調理場の設備配置、客席レイアウト、従業員用施設などを詳細に記載。工事業者に依頼し、保健所基準に適合するか事前確認が必要。 |
食品衛生責任者の資格を証明するもの(食品衛生責任者手帳等) | 食品衛生責任者の資格を証明する書類。各都道府県の食品衛生協会が実施する講習会(通常1日)受講して取得可能。 |
水質検査成績書(水道水、専用水道、簡易専用水道以外の水を使用する場合) | 井戸水などを使用する際に必要な書類。通常の営業では不要。 |
営業許可申請では、書類不備の確認だけでなく、施設が保健所の基準に適合しているかが重要なポイントです。施設の図面や食品衛生責任者資格の取得については、事前に余裕を持って準備することで、申請後のトラブルを防ぐことができます。
また、申請に必要な書類や基準は自治体ごとに異なる場合があるため、開業予定地を管轄する保健所に直接確認することをおすすめします。手続きが円滑に進むよう、早めに準備を整えましょう。
その他の飲食店開業に必要な資格・届出一覧
飲食店を開業する際に必要なのは営業許可書だけではありません。中でも重要なのが、食品衛生責任者の資格です。この資格は食品衛生法で定められており、すべての飲食店に最低1名の配置が義務付けられています。食品衛生責任者は、食品の安全性を確保し、食中毒などの事故を防ぐための重要な役割を担います。具体的には、従業員への衛生教育や食材の管理、調理場の衛生状態の確認などを行います。
もう一つの必須資格が防火管理者です。消防法により、収容人数が30人以上の店舗では、防火管理者の設置が義務付けられています。防火管理者は、火災予防や災害時の避難誘導など、店舗の安全管理を担当します。日々の火気使用設備の点検や、消防計画の作成・実施なども重要な業務となります。
この2つの資格以外にも、飲食店を開業するにあたって必要な届出や、取っておくと役立つ資格・届出があります。下記にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
食品衛生責任者〈資格〉 重要度:必須 すべての飲食店に最低1名配置
概要 | 飲食店など食品を取り扱う事業 |
取得方法 | 保健所が実施する講習会(通常1日完了)を受講。 受講料は1万円程度。新型コロナウイルスの影響もあり、オンラインでの受講も可能。 ※調理師や栄養士などの資格を持っている方は講習会の受講が免除される場合あり。 |
届出時期の目安 | 開業の3か月前 |
防火管理者〈資格〉 重要度:条件により必須 (収容人数30人以上の店舗)
概要 | 飲食店など食品を取り扱う事業所で、食品の衛生管理を適切に行うために必要な国家資格 |
取得方法 | 保健所が実施する講習会(通常1日完了)を受講。 受講料は1万円程度。 新型コロナウイルスの影響もあり、オンラインでの受講も可能。 ※調理師や栄養士などの資格を持っている方は講習会の受講が免除される場合あり |
届出時期の目安 | 営業開始まで |
防火対象設備使用開始届〈届け出〉 重要度:必須
概要 | 建物の構造や防火設備の状態などを確認し、火災発生時の安全を確保するため、建物を使い始める前に消防署に提出する届出 |
取得方法 | 消防署から指示された書類を準備して届出を提出。書類提出後、消防署による立ち入り検査があり、検査に合格すると使用許可が下りる。 |
届出時期の目安 | 開業2週間前まで |
火を使用する設備等の設置届〈届け出〉 重要度:条件により必須(火を使用する設備を設置する際)
概要 | 火災の発生を防止するため、ガスコンロ、ストーブ、ボイラーなど、火を使用する設備を設置する際に、その種類や設置場所などを消防署に提出する届出 |
取得方法 | 消防署から指示された書類を準備して届出を提出。書類提出後、消防署による立ち入り検査があり、検査に合格すると使用許可が下りる。 |
届出時期の目安 | 設備設置前 |
調理師免許〈資格〉 重要度:任意
概要 | 調理技術や食に関する専門知識を証明する国家資格。飲食店開業の必須資格ではないが、お客様や取引先からの信頼獲得につながる。 |
取得方法 | ①調理師試験に合格する 2年以上の実務経験が必要。公衆衛生学や食品衛生学、調理理論など幅広い知識が問われる。 ②調理師養成施設を卒業する 1年から2年程度のカリキュラムを修了する。 |
届出時期の目安 | 食品衛生責任者の届出前 |
開業届け〈届け出〉 重要度:個人事業主で開業する場合必要
概要 | 個人事業を開始したことを税務署に提出する届出。 事業所得が発生するような事業を始める場合、事業開始から1ヶ月以内に提出する必要がある。 |
取得方法 | 税務署へ開業届を提出。窓口、郵送、またはe-Taxで提出可能。 ※青色申告の承認を同時に申請することで、最高65万円の青色申告特別控除を受けられる。 |
届出時期の目安 | 開業日から1か月以内 |
開業前に整えるべき衛生管理体制
営業許可の取得後、営業開始までには、適切な衛生管理体制を整えることが不可欠です。
HACCP
まず、HACCPに基づく衛生管理の導入が求められます。HACCP(ハサップ)とは、食品の製造・加工工程における危害要因を分析し、それに基づいてリスクを防ぐための重要管理点を設定し、連続的に監視する手法です。この管理方法により、微生物汚染などのリスクを未然に防ぎ、安全な食品の提供が可能になります。
従業員の衛生教育
また、従業員の衛生教育も開業準備の重要な要素です。手洗いの徹底、清掃・消毒の手順、食材の適切な取り扱い方法など、衛生管理の基本を全従業員が理解し、実践できる体制を築く必要があります。教育を定期的に実施することで、日常業務における衛生意識を高め、店舗全体の信頼性を向上させましょう。
営業許可取得後の注意点
営業許可を取得した後も、継続的な衛生管理と定期的な確認が必要です。営業許可証は店内の見やすい場所に掲示し、有効期限(通常5年)を把握して更新漏れがないようにしましょう。
また、メニューの大幅な変更や設備の改修を行う場合は、事前に保健所への相談が必要になることがあります。特に、取り扱う食品の種類が大きく変わる場合などは、新たな許可が必要になる可能性もあります。
まとめ
飲食店の営業許可取得には、以下の3つのポイントが重要です。
1. 保健所に事前相談にいく
2. 必要書類を揃える
3. 取得後も更新漏れや申請漏れがないように確認する
飲食店の営業許可取得は、開業準備における重要なステップです。保健所への事前相談を丁寧に行い、必要な設備と書類を整え、適切な衛生管理体制を構築することで、スムーズな開業が可能になります。
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